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普段、みなさんが旅行・出張・帰省などで乗る飛行機。安全に快適に目的地へお客さんを運ぶために、多くの人が業務に携わっています。航空会社ではパイロット、客室乗務員、整備士・・・、その他にも、手荷物を預かり貨物室に乗せ取り出す人、機内食や飲み物を準備する人や搭載する人、パイロットと無線交信を行う管制塔のスタッフ、いろんな人がいる。その中から特に整備士の観点からお客さんではなかなか知りえない情報を提供したいと思います。
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47章はInert Gas System。

燃料タンクの爆発を防止するための
燃料タンク不活性化システムのことをいう。

このシステムは以前はなかったのだが
近年になって定まった規制を遵守するために
新機種には導入されている。

簡単に背景を説明する。

航空業界では一度事故が発生し原因が特定されると
再発防止のために規制が変更となることがある。

このシステムも多くの事故が発端になったようで
その中でももっともインパクトがあったのが
1996年7月17日に発生したTWA800便事故。

B747-100型機が上昇中
空のセンタータンクが爆発し、墜落。
230名が犠牲となる事故があった。

写真は事故後の破片から復元された機体。


原因究明と再発防止のための検討がなされ
米連邦航空局(FAA: Federal Aviation Administration)は
SFAR88(特別連邦規則:Special Federal Aviation Regulation)を
2001年6月に発行した。

これは発火防止の観点から安全強化策を実施するもので
その一つに燃料タンクの可燃性低減が示され
燃料タンク不活性化システムが導入された。

ではどのような原理で不活性化しているかというと

36章で説明した高温高圧空気(Pneumatic Air)から
酸素を除去し(空気から酸素を除くとほぼ窒素となる)
そのガスを燃料タンクに送り込んでいる。

要は燃料タンクの酸素濃度を下げているのである。

TWA800便の事故は空のタンクが
爆発の原因になった可能性が高いと言われている。

空とはいっても若干の燃料が残っており
燃料が気化した際にベーパー(蒸気:Vapor)が発生し
非常に火が点きやすい状態だったと想定される。

内燃機関は何でもそうであるが
燃焼(爆発)を起こすには3つの要素が必要である。
・燃料
・空気(酸素)
・火

従って燃料の蒸気と空気が混ざり
そこに配線がショートするなど何らかの発火があり
爆発に至ったのではないかと言われている。


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45章はCentral Maintenance System (CMS)である。
要は整備の中枢となるシステム。

飛行機には様々なコンピューターやセンサーが
いたるところに搭載されており

それらの信号やデータが
整備用のコンピューターに集められる。

その整備用のコンピューターは一般に
Central Maintenance Computer (CMC)という。

整備士はその情報を有効に活用して
故障探求(トラブルシューティング)や
予防整備などに役立てることができる。
 

仮に飛行中に何か不具合が発生した場合、

瞬時に関連系統のセンサーが不具合を感知し
(例えば空調系統のオーバーヒートなど)
パイロットに異常を知らせ必要な処置がとられる。

このあたりは31章で勉強した。

それと同時に同様の情報がCMCにも伝達され
整備用の情報として記録される。

飛行機が目的に到着後、整備士がCMCを確認し
何が原因で不具合が発生したかなどの故障探求情報や
修理持ち越しに関する情報を入手することができる。

修理持ち越しとはそこでは修理せずに
修理をキャリーオーバーすること。

基本的に飛行機は不具合がすべて修正された
完全な状態で飛ばないといけないことになっているが
部品がなかったり修理に時間を要する場合など
安全性は確保されたことを前提に修理持ち越しができる。

このあたりのルールはまた別の機会に。

CMCの情報は飛行機到着後に確認すると書いたが
近年増加しているローコストキャリア(LCC)の場合
便と便の間の時間は30分程度しかないときもある。

そんなときに飛行機到着後に故障情報を確認し
部品を用意して交換を行い健全性の確認を実施し
次便を出すのは難しい場合もある。

近年のトレンドとしては23章で勉強したエーカーズ
Aircraft Communication Addressing and Reporting System (ACARS)
の機能を使って飛行中に発生した故障情報を
即座に地上に無線送信できる機種も増えている。
↓ボーイングのイメージ図
 

この機能を使えば飛行中に故障情報が地上に送られるので
整備士は飛行機が到着する前に準備をすることができる。

またCMCには予防整備にも役立てることができると書いたが
そのあたりはまた別の機会に説明したい。


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38章はWater/Waste(水/排水)システム。

水システムはトイレ(Lavatory)やギャレー(Galley)で
蛇口から出てきたりトイレの洗浄に使用される。


保管場所は水タンク(Water Tank)である。
客室の下の荷物室(Cargo Compartment)付近にある。
これは機種によって異なる。


36章でも少し述べたがタンクが客室の下にあるから
タンクを圧縮空気で加圧することによって
スムーズな水の流れを作り出している。

これがないと重力に負けて水は出てこない。

エンジンやAPUの圧縮空気を使ったり
機種によっては電気式のコンプレッサーで
加圧する場合もある。

飛行機の水道水はおいしい・・・
と言う人がいると聞いたことがある。


それは本当なのだろうか?

ご存知の通り、家庭の水道水には
消毒用の塩素が含まれている。

飛行機も同様に夏場でも水が腐らないように
家庭の水道水よりも高濃度の塩素が入っている。

だからあまり飲むのはお勧めできない。


排水システムはトイレの汚物を処理する。
処理が正しい表現かはわからないがタンクにためる。

そして空港に到着した際に
専用の車両が汚物を抜き取ってくれる。


トイレの水を流す原理はちょっと複雑なので
また何かの機会に説明したい。


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